2003~2020年度の川崎医科大学衛生学の記録 ➡ その後はウェブ版「雲心月性」です。
川崎医科大学 同窓会報 ISOEAID終了報告
2010年10月28日
International Symposium on Occupational and Environmental Allergy and Immune Diseases 2010 (ISOEAID’10) in KYOTO, JAPAN 終了報告書 ―桜満開賀茂の流れも穏やかに―
Local Organizer 川崎医科大学 衛生学 大槻剛巳
春の到来を告げる風は,例年よりも早く列島を駆け抜けて行き,弥生半ばに桜の便りがあちこちから舞い込んでくる様な2010年の初春でした。

「京都で桜が観たい」というProf. Mario Di Gioacchino (Prof.. di Medicina del Lavoro ed Allergologia, Università "G. d'Annunzio", Chieti, Italy)の一言で,4月初旬に京都で開催を決めたInternational Symposium on Occupational and Environmental Allergy and Immune Diseases 2010 (ISOEAID’10)なのですが,本当に彼の望み通りに桜を愛でる時期になってくれるのか・・・相当に心配な日々でした。

と,唐突に弥生の気がかりを書き始めても,読んで下さっている同窓の皆さまには訳が判らないかと思います。

川崎医科大学同窓会よりの助成と表紙裏の広告を頂戴して,私がLocal Organizerという立場で去る2010年4月9日から11日に京大会館にて国際シンポジウム「ISOEAID’10 in KYOTO」を開催させていただきました。ここに改めて同窓会からのご援助に深謝いたします。本当にありがとうございました。

さて,今回の国際シンポジウムはどのようなものであったのか,ということを,まずは説明しなくてはなりません。私の所属しております衛生学を含め,公衆衛生学,健康科学,健康増進学,予防医学,環境医学などと呼ばれております一連の領域の中では,産業衛生~労働衛生というのも,一つの大きな実践ならびに研究の重要な課題となっております。日本でも日本産業衛生学会がございますし,同窓の先生方の中にも産業医として嘱託で,あるいは専任で御活躍の先生も多いかと存じます。

産業衛生領域の世界的な活動機関の一つに,国際労働衛生委員会(International Commission on Occupational Health:ICOH)があります。WHOやILOと協調しながら労働衛生について3年に一度の総会を設けながら,多くの分科会によって構成され,それぞれメンタルヘルス,リスク管理,騒音,産業中毒,その他諸々の労働衛生の問題点を改善すべく取り組んでいる機関です。

私はその中のアレルギー免疫毒性分科会(Alllergy & Immunotoxicology scientific committee)に所属しておりますが,本分科会は,本年4月からは,それまでSecretary GeneralでいらっしゃったItaly のChietiにありますUniversità "G. d'Annunzio"の Mario Di Gioacchino教授がchairに就任され,Secretary を私が拝命いたしました。

本分科会では,ICOH総会(2012年にメキシコでの開催が次です,振り返ると2009年に南アフリカ,2006年にイタリアのミラノ,2003年はブラジルのイグアス,2000年がシンガポールといった具合です)の合間に,世界各国でアレルギー免疫毒性学のシンポジウムを行っておりまして,これまでもイタリアや中国,また2005年には熊本大学上田厚教授が会長を務められて熊本市で実施されてまいりました。また,2009年にはICOH会長に日本人から初めて労働衛生研究所の小木和孝先生が御就任になられたこともあり,日本で開催することになりました。

そして,でもここに至るまでは結構バタバタで,2009年の6月にChairのGiaocchino教授のいらっしゃるUniversità "G. d'Annunzio"が北里大学と姉妹校っていうか教育研究の連携校提携を組み交わされるために,来日されたことで,港区白金の北里大学の白金キャンパス(薬学部や研究所病院があります)で打ち合わせ会が設けられ,まぁその頃から漠然と日本で開催しましょう,そして,一応Secretaryを私が務めることになっていましたので,大槻がLocal Organizerは務めましょうというニュアンスではあったのですが,出来れば,秋頃にでも倉敷で(美観地区もありますし,海外の研究者を招くには適切かなとも思っていたのです)開催くらいでいいのかなって思っておりました。

処が,その段になって,冒頭にも記しましたがGioacchino教授から「京都で桜が観たい」発言! これで準備期間も1年未満で京都で桜を鑑賞できる時期にってことが決定事項になってしまいました。

さて,そこからが本当にバタバタの準備になりました。ICOHの総会は世界各国から相当数の研究者あるいは労働衛生の実務を担当される職種の方々,勿論役所関係の人々なども集まられるのですが,アレルギーと免疫毒性の分科会は,おもに欧州の研究者と日本の研究者を主体にこれまでも実施してきた経緯があります(設立時のChairは鹿児島大学名誉教授の松下敏夫先生です)。ですので,宝が池(元々,借料も高いと聞いておりましたし)は端っから考えてはいなかったのですが,では他にというとなかなか良い場所がない・・・どうしようかって思っていたら,またまたGioacchino教授から「京大会館」で以前会に参加したことがあり,そこを希望するっていうメッセージが届きました。私も別の会で京大会館での研究会に参加した経験もありましたので,それはそれでよかったのですが,そこから急いで電話をして予約を入れ,それも桜満開の時期になる様にということで・・・ただ,その時期って日本の大学の先生方には年度初めで入学式だのなんだのとっても御多忙の時期なのですが・・・なんとか4月9~11日と決定したのでした。

それでも海外からの研究者を招待したりするのに,丁度,その時期の京都は桜観光の時期で,宿泊施設もその1週間だけは割増料金だとか,元々,なかなか押さえられないとか・・・本当に問題山積み,おまけに,倉敷や岡山ならば気軽に時間が空いた時に打ち合わせなどにも行けますが,京都というとそうもいかないとか,まぁ,なんだか大変でした。

それでも参加者,それぞれの抄録も集めることも出来たのが2月の末くらい,その後も,中国からの研究者に関してのVISAの問題も出てきますし,こちらが依頼した旅行代理店からの航空券ではイタリアのグループが満足されなかったりとか,諸々――。なんだか,バタバタとメールで作業を繰り返す日々でした。

加えて,3月に入ってもアフリカから参加を希望する研究者がメールを下さったのですが,郵便事情が悪かったり,VISA申請について,きっと申し込んで来られた研究者の方々は欧州に行くくらいの気持ちでその時期に申し出られたのでしょうね(詳しくは知りませんが),日本のVISAの発行にはとっても時間がかかり,こちらが書くべき書類も沢山であることもあまり御存知なく・・・・なんだかんだと,マリやガーナの領事館の方ともメールを繰り返すってことを直前まで繰り返しましたが,結局,残念ながらアフリカからの参加者にはVISAが間に合わず,来てもらうことが出来ないなんてこともありました。

さて,そうこうしている3月半ば・・・冒頭に記しました様に,日本各地で桜がどんどん咲いてきているってことで「京都で桜が観たい」というGioacchino教授の願いは,どうも開催時期には葉桜になってしまうのでは・・・という危惧がだんだん膨らんできました。

しかし,当日の4月7日,京都に行ってみて,会場の京大会館近くの賀茂川縁を歩いてみるとまさに満開の桜! 3月下旬が結構冷え込んだ上,雨も少なかったのが,桜を長持ちさせた原因だと思いますが,本当に嬉しく思いました。


さて7日はICOH会長の小木先生のOpening Remarkでした。労働衛生全般に渡って,そして日本がどのように貢献出来るかといった内容で,興味深いお話でした。

その夜はWelcome Partyでした。簡単な立食形式です。


大槻が参加しております厚生労働省科学研究班:労働安全衛生総合研究事業「化学物質の国際調和分類基準(GHS)に対応した感作性化学物質リスト作りとその応用による化学物質の安全使用」の先生方も,オランダからの研究者も含めて参加して下さいました。
そして2日目の4月8日からはシンポジウムの開催で,最初はGioacchino教授で呼吸器アレルギー全般のKeynote Speechでした。


その後,日本のそして欧州を中心とした研究者からの気道・皮膚のアレルギーの問題,化学物質(感作性物質を含む)の国際調和分類基準(GHS)に関連する話題,あるいはライフスタイルと免疫アレルギーの問題などが発表,討議されました。

加えてランチョンセミナーとして大槻が我々の教室で研究している「シリカ・アスベストの免疫影響」について講演を致しました。

この日の夜はReception。京大会館内のレストランで着席でのディナーにしました。そしてエンタテイメントは,この同窓会法でも紹介させていただいた自主制作CDの曲とともに,2006年に日本免疫毒性学会というのを主催した際に,外国からのお客さまもいらっしゃったので,英語の歌詞で作った日本免疫毒性学会学術集会のテーマソングがあったので,その両方を披露しました。


そしたら,Gioacchino教授もピアノを弾かれるということで,即興で「枯葉」などを弾かれ始めました。

さらに,これは目論んでいたのですが,予め,サンタルチアとかオーソレミオの譜面を用意していて,そのイントロを奏で始めたら,さすが,イタリア人達は唄うのが大好き,みんなで集まってきて大合唱になりました。サンタ~~~~~ル・チアァ~~~~。

さて,そんなこんなで最終日,多くのkeynote SpeechやSpecial Lectureがありました。ナノ粒子の問題,大気汚染とアレルギーの問題,室内環境や空気質あるいは感作性物質の検査法の問題などを沢山勉強致したました。加えてランチョンセミナーでは,このシンポジウムを支援してくださったヤクルト株式会社の提供によってプロバイオティクスとアレルギーの問題の日本およびイタリアの調査研究が報告され,これも非常に興味深い内容でした。

あるいは川崎医大でも2008にセミナーをしてくださった中国・山西医科大学の牛先生もご講演を頂きました。牛先生はイタリアへの留学経験があるそうで今回集まった欧州からの研究者とも親しくアルミニウムについての講演をしてくださいました。

ポスターセッションには日本の若い先生方が演題を出して下さいました。このシンポジウムはICOHの分科会としてのアレルギー・免疫毒性部門の主催ですが,日本で私が関わっている学会としては日本免疫毒性学会という会があって事務局を務めております。また日本産業衛生学会の中にもアレルギー・免疫毒性研究会という分科会もありますし,今回,演題を寄せてくださった日本の若手の先生方には,これら両方の学研究会でも,是非,ご活躍頂きたいと思っております。

さて,そんな感じで二日半の国際シンポジウムもそれでも大過なく終了することができました。Local Organizerからの参加者へのお土産はTシャツや小さい金箔のブックマークなどとさせていただきました。

さて,実はまだこの国際シンポジウムにまつわる仕事は残っていて,ここで発表していただいたいくつかの講演の中から原稿を募って,Gioacchino教授が編集副委員長をされているInternational Journal of Immunopathology and Pharmacologyの別冊特集号として発刊する予定になっています。今,丁度原稿集めに必死になっている最中です(もちろん,大槻は既に投稿済みですが)。

準備期間が1年未満ということもあって,とってもバタバタとしたままで突入したシンポジウムでしたが,参加してくださったすべての皆さんのご協力,そして教室スタッフの努力,手伝ってくださったコンベンション会社や旅行代理店のスタッフの方々の援助,そして川崎医科大学同窓会からの経済的なご支援なども合わさって,参加してくださった海外からの先生方からも「とっても良い会だったよ」と言ってくださいました。本当にありがとうございました。

さて,最後にお礼とともに,手作りのシンポジウムのウェブサイトのトップの画像と,この国際シンポジウムの抄録集の表紙を紹介しておきます。

満開の桜の下で和装の少女が微笑む姿。わるくないでしょう?

ご支援,本当にありがとうございました。改めて感謝いたします。